牧場訪問で気をつけたいこと 防疫の話

🐏羊と畜産

夏休み。動物とのふれあい体験や牧場めぐりを予定している方も多いのではないでしょうか。

今シーズン(2025年秋〜2026年春)のHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)の発生規模が「過去4番目」と報じられていました。(鶏鳴新聞2026年7月5日号) 防疫を考える上で話題として取り上げさせてもらいました。
羊や牛の牧場であっても、防疫はまったくの無関係とは言えないのです。

今日は、夏休みに牧場や動物ふれあい施設へ遊びに行く方に向けて、知っておくと安心な「防疫」の基本を、私自身の気づきも交えてお伝えします。

HPAI(鳥インフルエンザ)って、そもそも何?

HPAI(Highly Pathogenic Avian Influenza)は、高病原性鳥インフルエンザのこと。鶏や七面鳥などの家禽が感染すると、致死率がほぼ100%に達することもある病気です。

主な感染経路は、

・渡り鳥・野鳥のふんや分泌物
・感染した鳥との直接接触
・汚染された資材・車両・人の靴や衣類

ウイルスが空気中を漂って広がるというより、物理的な接触や汚染物を介して広がるのが特徴です。つまり、しっかりした対策で防げる病気でもあります。

感染するには。

感染症が広がる経路には、大きく分けて「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の3つがあるとされています。

・接触感染:感染源に直接触れる、または汚染された物を介して間接的に触れることで広がる
・飛沫感染:くしゃみや呼気などで飛び散った、ごく近距離(1〜2m程度)の粒子を介して広がる
・空気感染:空気中を漂う小さな粒子が、遠くまで運ばれて広がる(麻疹などが代表例)

そのうえで、今回話題のHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)はどうかというと、主な経路は「接触感染」です。

・渡り鳥・野鳥のふんや分泌物
・感染した鳥との直接接触
・汚染された資材・車両・人の靴や衣類

密な鶏舎内などではごく近距離の飛沫感染もありえますが、麻疹のように遠くまで漂う「空気感染」は基本的に想定されていません。つまり、接触経路さえしっかり断てば、防げる病気だということです。

感染すると。

HPAIは「家畜伝染病予防法」上もっとも重い区分である「家畜伝染病」に指定されています。
感染(疑いも含む)が確認されると、その農場の家きんは原則すべて殺処分となり、
農場を中心に移動制限区域・搬出制限区域が設定されます。国からの手当金はありますが、
発見・報告が遅れるほど減額される仕組みもあり、これが「早期発見・早期報告」を後押ししています。

なお、これはあくまで家きん(鶏・七面鳥など)が対象。羊や牛自体が殺処分されるわけではありませんが、
同居していれば飼養衛生管理基準の遵守対象になります。

来場者や羊(牛・馬)の牧場の防疫対策

鳥インフルに限らず、羊には羊の、牛には牛の対策するべき伝染病があります。もちろんこれに感染するとHPAIと同じ措置の対象になります。
家畜が殺処分になるのは、当たり前ですが悲しくなることです。それを未然に防ぐのが「防疫」です。
見えないウイルスや細菌に対策するので、これに効果があるのか疑問になることはあるかもしれません。
ですが、来場者と牧場がそれぞれ気をつければ防疫の効果はグッと高まります。

牧場に遊びに行くとき、来場者が気をつけたいこと

難しいことは何もありません。ちょっとした心がけで大丈夫です。

・施設の消毒(靴裏の消毒マットなど)には積極的に協力する
・許可なく施設に入らない。動物をなでたり、餌を与えたりしない。(道端の草もNG)
・敷地内で野鳥の死骸を見つけても、絶対に素手で触らない。近くのスタッフに知らせる
・動物にふれた後は、しっかり手洗いをする(これは他の感染症対策にも共通です)
・元気のない動物、様子がおかしい動物を見つけたら、触らずスタッフに伝える

普段の外出時の衛生習慣と、そう大きく変わりません。
コロナを経験した私たちなら難なくこなせるような心がけです。

牧場側も、見えないところでこんな努力をしています

来場者からは見えにくいですが、牧場側も日々こんなことを意識しています。

・飼料や水を屋外に出しっぱなしにせず、野鳥を農場に呼び込まない工夫
・入り口での消毒、専用の長靴の使用
・毎朝の動物の健康観察(元気がないか、食欲は落ちていないか)
・異常を見つけたら、家畜保健衛生所へすぐ連絡する体制

こうした積み重ねがあるからこそ、安心して動物とふれあってもらえる場になっています。

まとめ

夏休みも始まり、楽しい動物とのふれあいの思い出を作ってもらいたいと思い、この記事を書きました。

防疫は、農業全体、そして牧場を訪れるすべての人がつながっている問題です。今シーズンの「過去4番目」というニュースをきっかけに防疫のお話を対岸の火事にせず、ちょっとした心がけを持つだけで、動物にも人にも優しい夏休みになるはずです。

楽しい思い出づくりのために、ぜひ頭の片隅に置いていただけたら嬉しいです。

参考情報
農林水産省「飼養衛生管理基準について」
鶏鳴新聞2026年7月5日号

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