今回は羊の出産のお話です。羊は1月から3月くらいが出産のピークとなり、かわいい羊たちがたくさん生まれてきます。
そこで、出産を迎えるのにその兆候や注意点をまとめていきます。出産の時期を見極めて万全の状態で迎えられるようにしましょう。
- こうなってきたら出産が始まるかも、見るべき兆候3選
- 出産が始まる前にそろえておきたい道具
- 動物園飼育員時代の人工保育体験談
以上のことで話していきたいと思います。出産は命が生まれる大切な儀式ですが、突然やってくるとびっくりしてしまいます。
知識武装して慌てないようにしていきましょう。
出産前の兆候 3選

乳房が張りだし、陰部が大きく伸びる
わかりやすい特徴として、乳房が大きくなります。これは子羊が生まれてからすぐにミルクを飲ますために母羊が準備をしています。
個体差がありますが、後ろから見るとわかりやすく乳房が垂れてきます。
餌やりの際などに毎日チェックをして出産が始まりそうな個体にはチェックを入れておきましょう。
食欲の低下が起きる
妊娠末期になると胎児に栄養をまわすため母親の栄養摂取が不足しやすくなります。
そのうえ、ホルモンの失調やストレス、肝機能低下や子宮が胃腸を圧迫することなどが重なり体内にケトン体が蓄積し、ケトーシスといわれる食欲不振が起きやすくなります。
ここでも餌やり時での個体チェックが重要になります。
ソワソワしだす
出産直前にもなると群れから離れて歩き回ったり、敷料を前足で掘り返したり、寝たり起きたりを繰り返すなど、明らかにいつもと違う行動が見られます。
こうなると出産も直前まで迫っているので温かく見守ってあげましょう。
結構、動物はヒトの行動も見ているので私たちが慌てて落ち着かないと羊にも影響が出てしまいます。気持ちで慌てても、いつもと同じ行動をとって羊を安心させてあげましょう。
出産前に準備しておくもの

- 出産後に親子を隔離できる個室
- リテイナー(子宮脱対策)
- ヨーチンなどの消毒液
- 哺乳瓶、注射器、胃チューブ、保温箱
- 耳標、スプレー
- 断尾器、去勢器
この辺りを準備できると安心です。
個室は母と子供の絆を作るためや、個体の健康管理をするためにも必要になります。
写真のような簡易なものでもOK。設備があれば保温器などをぶら下げる場合もありますが、火事には注意。
リテイナーは膣が外に飛び出してしまった場合に使います。膣が外に出たままだと命の危険もありますし、来年子供が埋めなくなってしまうかもしれません。
哺乳瓶は子供が乳首からミルクを飲まず、人口哺乳に切り替えた場合や栄養が足りない場合に使用します。注射器や胃チューブの選択肢もありますが、誤嚥する危険もあるので可能なら哺乳瓶がおすすめ。
耳標は個体管理に必要で、出産頭数が多いと迷子が発生するので耳標でしっかり管理しましょう。
断尾、去勢はゴムリングで行うのが簡易な方法です。生まれて間もなくゴムリングを尻尾、睾丸に装着して栄養不足によって腐り落ちるようにします。
今後の出産に備えて、個体記録をとることも重要になります。
- 出産時間
- 出産数(1頭目と2頭目の時間差)
- 初乳確認
- 体重
- 母の出産対応 など
データとして残しておけば来年の参考にもなりますし、こういったデータの蓄積が家畜の成績上昇にもつながります。
人工保育体験談

動物園飼育員になって、担当が小型草食獣全般というくくりでした。
なのでいろいろな動物のお世話をすることができ、人工保育を経験した動物は
- ニホンジカ
- アカシカ
- ワピチ
- 水牛
- エランド(もののけ姫のアシタカが乗っていたヤックルみたいな動物)
- ブラックバック(レイヨウ系で雄は角があるが、雌はなし)
上の3つはシカの仲間で、大きさがニホンジカ(小)、アカシカ(中)、ワピチ(大)といった感じです。
特に多かったのがニホンジカになります。園内には多くのニホンジカがおり、初産の子は育児放棄が起きやすく、あとは園内で迷子になり、母がわからなくなってしまった場合に人工保育をしていました。
私が担当して成功したのはニホンジカ1頭、アカシカ1頭だけでした。
ニホンジカはリンちゃん(♀)と名付け、最初は哺乳瓶でミルクを飲んでくれず、注射器のシリンダーで少しずつあげていました。1日何回も飼育員が入れ替えでがんばり、哺乳瓶から飲んでくれるようになり、ふれあいでミルクやり体験ができるまでなつきました。
アカシカは幸男(♂)と名付けました。由来は、ちょうど見回り中に母親が水の中に生み落としてしまい、子供がわからず放棄してしまったのです。たまたま水中から救い出せたのでラッキーボーイを和名にしました。
幸男は最初から哺乳瓶で飲んでくれる子だったのでそんなに苦労もなく育ちましたが、アカシカはポニーくらいの大きさになるシカなので、スキンシップが命がけでした。笑
ワピチも人工保育したのですが、取り上げて1週間ほどで亡くなってしまいました。
獣医さんに解剖を依頼し調べてもらった結果、胃潰瘍が原因の一つといわれました。私たちが良かれと思ってお世話していたのが、彼にとってはストレスで胃に大きな穴が開き、そこからあげたミルクが漏れたのが死因だったのです。
この診断にはショックが大きかったです。家畜ではない野生の動物の人工保育がいかに難しいか実感しました。
水牛、エランドもミルクは飲めるのですが、どちらもうまく起立することができず、そのまま衰弱死、ブラックバックは順調に成長していたところ、獣舎の扉に運悪く激突して事故死という結果になりました。
就職したばかりで死というものをそれほど経験していなかったので、自分の携わった子が死んでしまう現実を受け入れられず、とても落ち込みました。
りんちゃんと幸男がいなかったら心が折れていたかもしれませんね。
まとめ
今回は羊の出産と兆候についてと私の体験談を語らせてもらいました。
命が生まれるというのは、交配から始まり、途中の母親のケア、出産後の子供のケアと飼育員の腕が試されることが多くあります。
出産への知識を高め、しっかりと準備を整え、焦らずに対応できるように経験値をためて、1頭でも多くの命を後世につなげられるように頑張りましょう。
参考文献:めん羊・山羊技術ハンドブック

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